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<Author: 王維>
<Title: 桃源行>
<Format: 樂府詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 桃源行>
<BookPage: 115>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
漁舟逐水愛山春，
兩岸桃花夾去津。
坐看紅樹不知遠，
行盡青溪不見人。
山口潛行始隈隩，
山開曠望旋平陸。
遙看一處攢雲樹，
近入千家散花竹。
樵客初傳漢姓名，
居人未改秦衣服。
居人共住武陵源，
還從物外起田園。
月明松下房櫳靜，
日出雲中雞犬喧。
驚聞俗客爭來集，
競引還家問都邑。
平明閭巷埽花開，
薄暮漁樵乘水入。
初因避地去人間，
及至成仙遂不還。
峽裏誰知有人事，
世中遙望空雲山。
不疑靈境難聞見，
塵心未盡思鄉縣。
出洞無論隔山水，
辭家終擬長游衍。
自謂經過舊不迷，
安知峰壑今來變。
當時只記入山深，
青溪幾曲到雲林。
春來遍是桃花水，
不辨仙源何處尋。
<End Poem>
<Translation>
漁師の乗る舟は、流水をさかのぼり、山間の春色を楽しんでいると、両岸の桃の花が古い渡し場をさしはさんで咲きほこっていた。そのまま、うっとりと紅花の咲く桃の木に見とれて、遠く入り込んでゆくのも忘れてしまい、深みどりの清らかな谷川をさかのぼりつくすと、ふと思いがけなくも人に出遭った。

山のほら穴をくぐって入って行くと、始めは入りくんでいて狭かったが、やがて山が開け広々とした眺めとなり、急に高く平らな土地となった。そして遠く一箇所、雲にとどくほど高い樹木の集まったところが見え、近づいて入ってゆくと、千戸もの家々に花や竹が散在していた。外から来たきこりは、そこではじめて漢王朝の名を伝えて王朝の変選を知らせたが、そこに住む人々は、この晋の世に秦朝そのままの服装であった。そこの住民たちは、うちつれてこの武陵桃源の地に住みつき、人間社会以外の別世界において、さらに田園を開拓したのである。そこでは、 月が明るい夜は、松の木の下に、部星の格子窓が静かに見え、日の昇った昼は、雲の中のような桃源境に鶏や犬の声がひびく。

桃源境以外の俗世間から来た人と聞いて驚き、村人たちはわれ先にと集まって来て、争って招いてそれぞれ家に連れて帰り、町や村のようすをたずねた。夜あけがた、村の里の入り口の門は落花を揃いて開き、日暮れにはそこに住む漁師やきこりたちが川水に乗って帰ってくる。最初秦時の乱に、住みなれた土地を避け乱を避けるために人の世を立ち去り、その上に神仙の術をも求めて学ぽうとして、そのまま帰らなかった。この山峽の中にいったい誰が、人の生活があると知る者があろうか。外界の誰も知る人はいない。俗世の中に住む人が違く眺めやれば、雲や山が空しく見えるばかり。

樵客はこの世のものではないこの別天地の、容易に見聞きし難いことは疑うことなく心得ていたが、俗心はなお尽きることなく、故郷のことが思われた。桃源境の出入り口のほら穴を出て家に帰り、どんなに山や川を隔ててしまっていても問題にすることなく、また家を離れて終生長くこの境にほしいままに遊ぶつもりだった。自身、もと来た道順を迷うことはないと思っていたが、山や谷のようすが、今来てみると変化してしまっていようとは、どうして知ることができたろうか。当時のことは、ただ、山の奥に深く入り、深みどりの清い谷川を何回も渡って、雲のかかった奥深い林にたどりついたことを記憶しているだけ。春が来るとすべて、どこにも桃の花びらを浮かべて流れる水はみなぎりあふれ、桃源の仙境を見定め得ず、もはやどこにたずねあてることができるであろうか。
<End Translation>